2018年3月16日 現代の心の病気のマッピング(2) 記憶の黒板に書かれた文字
講師:横山 章光(あいわクリニック院長 精神科専門医)
通常の講座と違い、クリニックの待合室での研修会は、講師の横山先生との距離も近く、
参加者が問題提起をしたり、今抱えている問題を質問するような形式となりました。
親が発達障害で子がその影響を受け生きにくい状況にあるケースや親が自己愛性人格障害のケースから
サイコパスにつながるお話はとても興味深いものでした。
また、DVや親の虐待のケースでは、
「そのような環境下で養育された子どもには、『子どもの方程式』すなわち、
『親からたたかれること=愛(と信じなければならない)』…というものが成立しており、
この方程式は子どもが成長したのち親の虐待からは解放されても、
叩かれないと愛されていないという疑いを持ち続けることになる」というお話は
DVや虐待の連鎖という問題を理解する上で大変説得力のあるものでした。
いじめの構造に関する質問に対して、
横山先生から「いじめは起こってはいけないことなのか」という逆の問いかけがありました。
「いじめは人間関係のある証、そこには少なくとも人間関係の力動が働いている。
昨今その人間関係が失われつつあるという危惧から言えば、最悪ではないのではないか?」という問いです。
この問題では参加者同士で活発な意見交換ができました。いじめは容認できるものではありませんが、
SNSやオンラインゲームなどの普及で、子どもたちの人間関係が危機的状況にあることを
再認識することとなりました。
さらに子どもの発達障害に対する薬の服用の是非の質問に対しても、
「一概に薬の服用は子どもにとってマイナスなのか?」と、先生から問いがあり、
「デメリットだけでなくメリットも考え、今その子どもの成長段階にとって何をすることが大切なのか、
どのような援助が必要なのかを考え、実行することが周囲の大人に求められている」
という内容のお話がありました。横山先生の講座では参加者の質問に簡単に答えを出されるのではなく、
私たちが当たり前のように感じ、考えていることをいったん白紙に戻して考えましょうという流れがあります。
ありがちなバイアスを取り払い、問題を見つめなおして、参加者が色々な角度から自由に発言のできる
今回の研修会では、ファミリーコンサルタントとしての姿勢を見直し、
問題をどのように捉えていけばよいかの気付きをいただくことができました。